美しいのにコケまくる「ピカデリー サーカス エロス像」不運の天使像

美しいのにコケまくる「ピカデリー サーカス エロス像」不運の天使像

イギリス・イングランドのウエストミンスター市にある首都ロンドンにあるピカデリー・サーカス南東には、ロンドンのランドマークとして親しまれている「ピカデリー サーカス エロス像(Eros statue at Piccadilly Circus)」が建っています。この美しい博愛の神“アンテロス”が、官能の神エロスと呼ばれるようになったのには理由があります。シャッフルベリー・メモリアル噴水のモニュメント「ピカデリー サーカス エロス像」と、設計者である彫刻家アルフレッド・ギルバートについてご紹介します。

ピカデリー サーカス エロス像とは

ロンドンの街を飾るシンボルのひとつとして知られている「ピカデリー サーカス エロス像(Eros statue at Piccadilly Circus)」は、イギリス(イングランド)の首都ロンドンにあるピカデリー・サーカス(Piccadilly Circus)広場の設けられた彫刻で、シャッフルベリー・メモリアル噴水(Shaftesbury Memorial Fountain)の頂点に立っている世界で初めてのアルミニウム製モニュメントです。
シャッフルベリー・メモリアル噴水は、イギリスの政治家で慈善運動家の第7代シャフツベリー伯爵・アントニー・アシュリー・クーパー(Anthony Ashley-Cooper)を記念して建てられたものです。設計者はロンドン生まれの“不運の彫刻家”、アルフレッド・ギルバート(Alfred Gilbert)という人物です。

実はアンテロスだったエロス像

ピカデリー サーカス エロス像には、「キリスト教的慈愛の天使」というタイトルが付いています。設計者のアルフレッド・ギルバートがギリシャ神話に登場する愛の神エロス(Eros)の双子の弟アンテロス(Anteros)を想定してこのモニュメント作ったというのは有名な話で、双子ならどちらでも良いと思われるかもしれませんが、“キューピッド”として親しまれているエロスは性愛の神で、アンテロスは相互愛や同士愛を表す神なのです。
苦役を強いられていた子供たちの労働環境を改善し、多くの不公正行為を摘発するなど、数々の慈善活動で業績を残したシャフツベリー卿の生涯を表現するモニュメントの製作を依頼されたアルフレッド・ギルバートは、5年も悩んだそうです。そんな作者の苦悩とは裏腹に、ロンドン市民から「エロス像」と呼ばれているのには理由があります。

酷評されるアルミ製の少年像

ピカデリー サーカス エロス像のモデルは、当時15歳の少年だったアンジェロ・コロラッシ(Angelo Colarossi)です。彼の父親もやはりアーティストのモデルでした。アルフレッド・ギルバートはアルミニウムの軽さと柔らかさを最大限に生かし、ブロンズではバランスを支えきれない大きな翼と細い足で、躍動感のある天使のモニュメントを完成させました。エッジの効いた風切羽の表現などはアルミならではの造形です。
美しい天使の像を乗せたシャフツベリー記念噴水は、ウェストミンスター公によって1893年(明治26年)に公開されましたが、セミヌードの少年像は当時のロンドン市民にはあまりに官能的でした。有徳の伯爵を記念するモニュメントにふさわしくないとする多くの苦情への対処として、「アンテロス像」から「キリスト教的慈愛の天使」に改名されても浸透することはありませんでした。

呪われたピカデリー サーカス エロス像

さらにアルフレッド・ギルバートは、アンテロス像の下に3,000ポンドの青銅を使用して噴水を設置し、飲用泉にする予定でした。彫刻を施したカップも用意しましたが、発注した水盤は小さすぎて周囲が水浸しになる始末。失望したアルフレッドは除幕式に出席しませんでした。中途半端な水盤は、美しい台座として今も像を支えています。その後も相次いだ嫌がらせのため、守衛が必要なほどでした。
よじ登った酔っ払いに破壊されたり、子どもの遊具になったりとさまざまな苦難に遭ってきたエロス像。水盤には美しいアール・ヌーボー装飾や子供の顔、半魚人が施されています。1901年には逃げるようにイギリスを離れ、妻とも離婚した可哀そうなアルフレッド・ギルバート。のちにエロス像のおかげで人生が台無しにしたと語っています。

いかがでしたか?

今も季節ごとによじ登る人が絶えないエロス像は、保護と広告を兼ねて中で雪が舞う巨大なスノードームに変身したこともありますが、ファンの風圧に負けて倒壊してしまいました。アルミだから仕方がないですよね。これからも世話が焼ける美しいシンボルとして、市民や観光客に愛され続けることでしょう。

基本情報

所在地:Piccadilly Circus, London, W1
アクセス:地下鉄ピカデリーサーカス駅より徒歩1分

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