ハワイに就航した『超大型機A380』がハワイに就航!そのスケール感から乗り心地、ANAの戦略までを解説

2019年5月24日、ANAが日本で初導入したエアバスのオール2階建て機A380の成田/ホノルル線が就航した。

当面は週3往復での運航だが、ANAはオーダーしている3機のA380をすべて同路線に投入する計画で、7月からは早くも週10往復に。

ハワイ路線にはライバルも早くから力をいれてネットワークを強化してきたが、ANAは超大型機でその牙城を崩すことができるのか?今後を展望していこう。

大型機であるほど旅は快適に

青いウミガメの特別塗装を施したNH184便「FLYING HONU(フライング・ホヌ)」は、
5月24日の20時10分、乗客512人と乗員24人を乗せて定刻どおりに成田空港の45番スポットを離れた。

A滑走路からの離陸は20時38分。ホノルルには出発同日の朝8時30分に到着する。
現地で初日からたっぷり時間を使えるスケジュールは、旅行者にはとてもありがたい。

そこで夜間フライトの重要なポイントになるのが、
機内での7時間余りをいかにリラックスして過ごし、身体を休められるかだろう。

世界一大きな旅客機であるA380は、その点で大きな威力を発揮する。「大型機であればあるほど快適」というのが私の持論だ。
まずはそのスケール感について触れておこう。

45番スポットで初就航の出発準備が進むNH184便

A380が空港に到着し、駐機スポットに収まると、近くにいる他の旅客機がどれもまるで小さな子供のように見える。
とにかく大きい。

オール2階建ての構造で、1階と2階を合わせた総床面積はかつて空の大量輸送時代をリードしてきたボーイングのジャンボ機(747-400)の1.5倍。

ボディの長さ(全長)こそ72.3メートルと〝次世代ジャンボ〟として登場した747-8(76.3m)や各社が長距離国際線の主力機材として使用する777-300ER(73.8m)に及ばないが、それでもJR山手線車両のほぼ4両分に相当する。

圧巻は高さ(全高)と横幅(全幅)だ。
地上から垂直尾翼の先までが24.1メートルあり、これは8階建てのビルの高さをイメージしてもらえればいい。

そして横幅──左右の主翼の端から端までが79.8メートル。
翼の面積でいうと、約538平方メートルあったジャンボ機の主翼がよく「テニスコート(約261平方メートル)2面分が収まってしまう大きさ」と例えられてきた。

同じ言い方をするなら、A380の主翼は約845平方メートルもあり、
テニスコートどころかその1.6倍あるバスケットボールのコート(約420平方メートル)が左右に1面ずつ取れてしまう計算だ。

デビュー当時は「メタボな胴体がかわいい」と若い女性ファンの間でも評判になったが、メタボゆえに客室スペースも広い。
仮にすべてエコノミークラスで座席をレイアウトすれば、A380は一度に800人以上の乗客を運ぶことができる。
もちろん800席が常に埋まる路線など、世界中のどこにもない。

A380は1階と2階を合わせた総床面積がジャンボ機に比べて1.5倍も広く設計されたことは前述したとおりだが、
メーカーが設定した3クラスでの標準座席数は、ジャンボ機の412席に対してA380は525席──つまり座席数では1.27倍しかない。

そのぶん座席以外に使用できるスペースが広く、アイデア次第でこれまでの旅客機とはまったく異なったキャビン設計やシート配置が可能になる。
A380をいち早く導入した各社は標準よりもさらに席数を少なくし、
豪華な個室型シートを設置したり、ゆとりが生まれたスペースにラウンジやシャワールームを設置するケースも見られた。

ゲート前で開催された「フライング・ホヌ」就航セレモニー

すべてのクラスを新しく設計

ANAもこの広大なスペースを有効活用しようと、ホノルル線のサービスの全面刷新を進め、各クラスでA380向けの新シートを開発した。アッパーデッキ(2階席)には前方から、ドアを備えた個室型ファーストクラスを8席、人気だったスタッガード型シートをさらに進化させたビジネスクラスを56席、約97センチのシートピッチを確保して足もとのスペースを広げたプレミアムエコノミーを73席でレイアウト。詳しくは内覧会時の写真を見ていただきたい。

そしてメインデッキ(1階席)には、エコノミークラス383席を配置した。今回のホノルル線就航初便に私が送り込んだ取材班の一人からは「往路はエコノミーでしたが、それまで乗ってきた機種に比べるとエコノミーでも格段に快適ですね。私は窓側席をとりました。横幅もだいぶゆとりがあったように思います」と報告を受けている。たしかに、A380は窓側席の肘掛けが機体の丸みのある部分にあたるので、そのぶんゆったり座れる。ANAのスタッフも「通常は通路側席から埋まるケースが多いのですが、A380は窓側席もおすすめですよ」と話していた。

また別の取材者からは「離陸後は撮影などに忙しかったですが、そのあとは到着までぐっすり眠れました。音も静かですし、揺れもあまり感じない飛行機ですね」という感想も。実際、A380は離着陸時の騒音レベルが従来の大型機のおよそ半分という設計データがある。両翼が大きいのでエンジンがボディから離れたところにあり、機内の静寂性も高い。開発にあたってはボディの外板と内壁の間の防音処理などの研究にも大きな力を割いたと聞く。揺れが少ないというのも同感だ。気流が多少悪いエリアを通過するときも、大型でしなやかな主翼で揺れを吸収しながら、ぐいぐいと進んでいく。逆風の中での安定性や力強さは、さすがA380だと私も乗るたびに実感してきた。

bills監修のエコノミークラス機内食も乗客に高評価だった

ホノルル空港での体制も強化

もっとも、まだA380を未体験の人たちからは、一度に500人以上が乗る大型旅客機での旅について心配する声もある。

「到着空港でそんなに多くの人たちが入国審査の列に並ぶことを想像すると恐ろしい」「出国時のチェックイン手続きにもだいぶ時間がかかるのではないか」などといった懸念だ。

たしかにこれまで何度かハワイを旅してきた経験から、ホノルル空港が常に混み合っているイメージを私も抱いてきた。

「降機がいちばん最後になるエコノミークラスでも、ブロックインからゲートに出るまでが20分弱くらいでしたね」と取材班の一人は言う。
「ゲートから入国審査の列に並ぶまでの時間が約10分。パスポートを自動チェック機に通し、さらに担当者による入国手続きを抜けるまでが30分くらいです。
その間に預けた荷物はすでにターンテーブルに出ていましたので、トータルでも1時間程度でストレスなく入国できました」。

ホノルルに到着。背後にはダイヤモンドヘッドが

ANAとしてもA380導入による混雑を見越して、ホノルル空港での体制強化に取り組んできたようだ。たとえばJV(ジョイントベンチャー)のパートナーであるユナイテッド航空の協力を得ながら、一体的なカウンターエリアの共用体制を構築してきたのもその一つ。ブースを8カウンターから12カウンターへ増設し、自動チェックイン機(ユナイテッド航空と共有)も24台の導入したほか、自社スタッフと委託先スタッフを増員してマンパワーも強化してきたという。

ホノルル空港でのチェックイン風景

「出国時には、セキュリティー検査後に出発ゲートがあるCアイランドまで15分間隔で送迎バスが運行されていました」と取材班の報告は続く。「買い物をしながら10分くらいぶらぶら歩いて向かうのもいいですし、送迎バスなら3分もかかりません。フライング・ホヌの就航に合わせてホノルル空港に開設されたANAラウンジも、A380への搭乗ゲートと直結していて、すごく便利でした」。

A380はハワイへの旅行者を増やす?

ところで、エアバスは「A380の生産を2021年で終了する」と発表した。受注が伸びず、また最大のA380オペレーターである中東系航空会社が発注していた機数の一部をキャンセルしたことも引き金になったようだ。2007年10月にデビューして以来、A380のこれまでのトータルオーダー数は約250機。ベストセラー機といわれるエアバスA320やボーイング737のオーダー数と比べると10パーセントにも満たない。けれど、そうした小型機とはもともと市場規模が違うのだ。単通路型の小型機が売れる背景には、150〜200人を乗せて2〜4時間のフライトで移動するという路線が世界には圧倒的に多いという路線需要がある。それを考えると、500人以上を乗せて長距離を飛ぶA380への支持も、決して低くはないと言えるだろう。早期にA380の導入に踏み切ったあるエアラインの幹部は、私にこんな話をしていた。

「航空需要は年々増え、最近は世界中のどの主要空港も混雑が目立っています。発着する便数をこれ以上増やせば、環境に及ぼす影響は計り知れません。その問題を、これからどう解決していくか? 一度のフライトでたくさんの乗客や貨物を運べる超大型機を選択したことは、じつは私たちにとって地球環境を守るための重要なステップだったんです」。

ANAにももちろん、同様な狙いがあっただろう。さらに「ハワイ路線のシェアを現在の15%から25%にまで引き上げたい」という同社に意向にも、限られた発着枠を有効利用できるA380は戦略的にマッチしていた。そして何より、利用する側からも「A380に乗って旅をしたい」という熱いラブコールが数多く寄せられている。女優の綾瀬はるかさんを起用したキャンペーンなどでも注目を集め、早くから初便チケットの死守に走った人も少なくなかったようだ。同乗した取材班も「ホノルル空港に着いたら、1泊もしないでそのままとんぼ返りで復路についた人たちが30人くらいいました!」と目を丸くする。〝0泊の旅〟というのはさすがマニア層だと思うが、それが30人もいたと聞いて私も正直驚いた。

帰国便の機内(ビジネスクラス)でゆったりくつろぐ乗客たち

最初に旅の目的地を決め、そこに行くために必要な航空会社を選ぶ。それが従来の一般的な旅のプランニングの方法だった。しかしA380が登場して以降は、まず「この飛行機に乗ろう」という思いが先にきて、その就航地の中からプランを決める──そんな旅のスタイルも確実に生まれてきている。ANAのA380「フライング・ホヌ」は自社のシェアを高めていくばかりではなく、ハワイへ旅行する人たちの全体的な〝パイ〟をも広げることにも寄与していくのではないだろうか。

巨大なボディに塗装された〝空飛ぶウミガメ〟はANAホノルル線のシンボルに

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら新聞・雑誌、Web媒体などにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『航空大革命』(角川oneテーマ21新書)や『ボーイング787まるごと解説』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』(ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)など著書多数。

 

参照元➡トラベルボイス(観光産業の最新情報やトレンドを伝えるニュースメディア)

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